MENU

家庭菜園の最近の天候リスク【温暖化と春の不安定天気への対策】

今回は家庭菜園に関する天候リスクに関するお話です。

目次

植物に必要な5つの要素

植物に必要なものをまず整理しておきます。必要なものは以下の5つです。

  • 温度(植物には適切な生育温度が存在します)
  • 空気(酸素も二酸化炭素も必要です。酸素で呼吸し、光合成で二酸化炭素を使います)
  • 水(光合成や蒸散などで必須です)
  • 光(光合成で必要です)
  • 栄養(ミネラルがないと植物体を維持・成長できません)

これらが異常気象で阻害されることにより生理障害が発生する、という予想を立てて対策を考えるというのが今回の記事の趣旨となります。

今回取りあげるのはこの中でも「温度」「空気」「水」「光」の話となります。

「栄養」に関しては大雨が増えれば酸性雨もそれだけ増えて、さらに地中の栄養分の流出なども考えられ、何らかの影響がある可能性もありますが、後述するように大雨が増えても一年の雨の総量自体はあまり変化しないという予測もあり、影響を予測するのが困難なので今回は取りあげませんでした。

異常気象が常態化して、今までにないリスクが発生しやすくなっている

近年異常気象が発生しやすくなっている、という話を疑う必要はほとんどないでしょう。毎年過去にない猛暑とか、日照りでダムの貯水率が減っているとかニュースになります。

文部科学省の情報によると、地球温暖化の気象への影響として以下のようなものが考えられています。降雪の影響や海水面の上昇など他にも影響が考えられますが、今回は家庭菜園に影響がありそうな4点を取りあげました。(気象庁「日本の気候変動2020」をもとに当ブログ運営者の陽が作成)

  • 4℃上昇シナリオによる予測では猛暑日は約19.1日増加する。
  • 全国平均で見た場合、大雨や短時間強雨の発生頻度や強さは増加し、雨の降る日数は減少すると予測される。
  • 日本全国の年間降水量には、統計的に有意な変化は予測されていない。
  • 4℃上昇実験(シミュレーション)の結果などから、日本の南海上においては、非常に強い熱帯低気圧(「猛烈な」台風に相当)の存在頻度※が増す可能性が高いことが示されている。

このほかに渇水(雨が降らない)の頻度も増えます。

水はわたしたちのくらしに不可欠であるが、近年、特に、西日本を中心に渇水が増加している。

国土交通省ウェブサイト, 第I部 進行する地球温暖化とわたしたちのくらし~地球温暖化対策に向けた国土交通行政の展開~

多くの植物にとって大切な時期となる春の気象リスク【温度・光】

地球温暖化だけではなく、春の気象リスクも見逃せません。春は高気圧と低気圧が交互にやってくる変わりやすい天気が増えるので、いきなり寒くなる、何日も晴れない、というリスクがあります。そうなると何がまずいかというと以下のような問題があります。

  • 芽吹いた直後に霜にあたって枯れる(ジャガイモなどで経験のある方も多いでしょう)
  • 耐陰性の弱い作物は日照不足で徒長したり枯れたりする

家庭菜園をやっている方なら常識かもしれませんが、自分へのメモとして一応取りあげておきます。多くの植物にとっては春は芽吹きの季節なので、その時期に寒かったり日照不足になると植物体がまだ弱い芽吹きの時期を直撃するわけです。

種まきや植え付けをするという内容では2週間先までの天気予報(最低気温)を見たり、その地域で種まきや植え付けするならいつがいい、という情報が出回っている可能性があるので調べてみましょう。関東ならジャガイモの植え付けは3月のどのあたりとか調べれば出てくると思います。

生育適温も調べればすぐ出てくるので割愛します。作物の耐えられない温度が氷点下などの場合は室内に入れればだいたい10℃以上をキープできます。トマト苗などは注意しましょう。直播よりポット苗を室内で作ったほうが無難かもしれません。

試験の結果、-1.6℃を下回ると枯死が始まり、-4℃前後では、完全に枯死することが明らかになりました。

埼玉県農業技術研究センター, トマト栽培における低温障害を発生させる温度と時間, 新技術情報 2015

問題は日照不足。私の地域はこの先一週間は晴れない予報です。

では植物はどのくらいまでの連続した曇りなら耐えられるのでしょうか?

耐陰性が低い作物の連続した曇りへの耐性【たぶん枯れることはない】

日照計を用いて窓越しの照度を測ってみました。すると曇りの日の照度は約6.0klx、晴れの日は40klx~50klxくらいでした。

トマトの光補償点は約3.0klx、ナスの光補償点は約2.0klxです。(タキイ種苗株式会社,今さら聞けない

つまり曇りならとりあえず枯れないと思われます。曇りだからと育苗中の発芽直後の苗を暗所に保存するよりは曇りでも縁側に出しておいたほうがよさそうです。ただし春は外気温が低くて窓のすぐそばでは寒すぎることもあるので、温度を測りながら植物と窓との距離を加減してください。

光補償点は作物の光合成産物の生産量と呼吸による消費量が同じになります。つまり光合成と呼吸が釣り合ったぎりぎりの光量のことです。ぎりぎりでは少し光量が減れば途端に光の収支はマイナスです。どんどん弱っていきます。何らかの方法でたまに光を補ったほうがいいでしょう。

そういうときは植物育成ライトがおすすめです。通常のLED電球より光の波長がカスタマイズされているので植物育成に役立つでしょう。以下のHaruDesignのライトは結構光が強くて、ライトに植物を近づけすぎると葉焼けする可能性があるというレビューもあるので、近づけすぎないで利用したほうがいいでしょう。ライトと植物の距離が心配なら照度計を利用してライトと植物の適切な距離を探ってもよいです。作物にもよりますが、20.0klx(2万ルクス)以下くらいになる距離がいいと思います。イチゴの光飽和点と冬の晴天の時の照度が大体そのくらいです。一応葉焼けしないか様子をみましょう。

ではどのくらい光を照射すればいいのか、という話ですが、次の文献ではイチゴを対象に3時間の照射で実験されていて、その結果として収穫果実数が増えた、とあります。

日陰発生状況の調査結果を基に、建物影がハウス内に発生する時間を7:00-10:00と想定し、かつ日かげ区におけるPPFDが450μmol m-2 s-1以下となる条件時にのみLEDが点灯するように設定した。
〔……〕
12月から開始されたLED補光により1月の開花数は約5倍に増加し、3月の収穫果実数は約1.6倍に増加した。

日高 智美, 三好 悠太, 犬房 弘樹, 日高 功太, 田中 泰洋, 岡安 崇史, 安武 大輔, 北野 雅治, イチゴ栽培ハウスにおける冬季日照不足の改善策としての LED 補光の検討, Eco-Engineering/29 巻 (2017) 2 号

イチゴはトマトほど光を必要としないのでトマト苗などにそのまま適用はできませんが、一つの目安として一日3時間くらい曇天や雨天のときに照射すればいいのではないでしょうか。とりあえずそのくらいの照射でも効果がありそうです。

後述しますが植物の気孔がよく開いて光合成のための二酸化炭素をたくさん気孔から取り込むことができる時間帯は朝から昼までの午前中です。照射するなら夕方より午前中の方が良いでしょう。もちろんいちごの促成栽培のための長日処理などがしたいときは夕方から点灯させます。普通の作物の光合成の促進なら朝から昼の間に数時間照射するくらいが良さそうです。

なおよりサステナブルにするなら、植物育成用ライトを太陽光発電で作った電気で充電したポータブル電源で駆動させるとよいでしょう。ご興味がありましたらこちらの記事もご覧ください。ライトの消費電力がだいたい20Wから30Wなので、200Wh程度の容量が一番下くらいのグレードのポータブル電源でも5時間から6時間くらい駆動できる計算になります。

あわせて読みたい
ポータブル電源でテレビは何時間動く?【おすすめ容量とソーラーパネル】 今回はポータブル電源の容量の目安を考えるために、テレビを例にして解説していきます。 普段からテレビの電源をポータブル電源で賄おうとすると結構大がかりになるので...

猛暑日に対する対策【温度・光】

地球温暖化の解説のところで猛暑日が増えるという話をしました。

夏野菜のトマトでは高温障害が発生する可能性があります。

また、35℃以上の高温では着色が阻害されるなど、高温により多くの影響を受けるとされています。

AGRIくまもと, 夏秋野菜(トマト)の 栽培管理について

対応は遮光となります。支柱を立てて遮光ネットなどで遮光します。

またイチゴでも高温障害が発生します。40℃とする文献もありますが、35℃とする文献もあり、安全率を考えて35℃が限界と考えます。

4.ハウス栽培における定植後の温度管理は生育,収量から考え35℃前後の高温に管理すべきであり,その期間は開花盛期までで良好な結果を得ているが,実際栽培上はかなり危険性がともなうので出蕾直前までにとどめるべきであろう.

長 修・加藤昭, 半促成株冷蔵イチゴの温度管理について, 栃木県農業試験場研究報告, 1970

遮光ネットでもいいですが、植木鉢などで管理しているならこういう洗濯用ネットでもいいと思います。ある程度照度が落ちます。それでも葉焼けしたり元気がなくなるときは強光のときは日陰に移動させましょう。日向で35℃以上になるようだと生理障害(主に実がなっている期間)が発生する危険があるので、遮光しても温度が下がらないなら日陰に移動です。路地栽培で気温が収穫期の5月に35℃になるという可能性も無くはない(温暖化の影響)ので、そういう時は遮光や植木鉢の涼しい場所への移動などを行いましょう。

なお35℃以下を守ったほうがいいのは主にビニールハウス内の話なので、路地で来年用のランナーとりに使う苗を秋まで延命させるなら、あまり神経質にならずに遮光して株が枯死しないように管理すればいいと思います。秋になれば花芽分化しますし。

上で強光なら日陰に移動と書きましたが、日陰だけで作物を生育させるのは難しいので、半日陰にできる・存在するならそういう場所へ移動させましょう。無理なら苦肉の策ですが、午前中の涼しい時間帯だけ家の東側で日に当てるといいかもしれません。

下は猛暑日(2023年7月12日)の午前5時から正午までの東京の気温変動です。

気温(℃)全天日射量(MJ/㎡)
525.50.02
627.20.34
728.30.93
830.01.57
930.41.90
1033.12.80
1134.03.24
1235.23.38
気象庁ホームページ「東京(東京都) 2023年7月12日 (1時間ごとの値)」をもとに陽が作成

冬の晴れの日の午前10時の全天日射量が約1.5MJ/㎡くらいなので、猛暑日の午前8時くらいの値なら十分な光量と考えられます。

とりあえず午前11時までなら35℃を超えないので、そのくらいまでなら日向にギリギリ置けるかもしれません。すると8時から12時までを考えても4時間くらい日に当てることができます。もちろん7時でもそれなりに日照はあります。

植物は午前中のほうがよく光合成すると言われています。

植物の光合成は、比較的午前中の時間帯に多く行われているといわれています。特に葉の裏面にある気孔は、朝7時〜9時の間が最も大きく開いているとされ、光合成の量も必然的に多いようです。

AND PLANTS, 日光に強い観葉植物|おすすめと管理のコツについて

一方,ポットのままの状態で測定した場合には8時の値が最も高く,12時及び16時では低下する傾向が認められた.

稲垣 昇, 津田 和久, 前川 進, 寺分 元一, アスパラガスの光合成に及ぼす光強度,CO2濃度及び温度の影響, 園藝學會, 園藝學會雜誌, 58巻2号, p. 369-376, 1989年.

アスパラと観葉植物メインの情報ですが、他の植物にも当てはまる可能性は高いです。すると午前中だけでも日光に当てれば、ギリギリ大丈夫かもしれません。もちろん気温が高すぎなければ一日中日光浴させたほうがいいですし、午前中だけ当てるより遮光して一日中あてたほうがいいです。午後でも光合成は続くからです。あくまで苦肉の策として対策の例を示したにすぎません。

なお気孔が開くと光合成が活発になるのは、気孔が開くと二酸化炭素を取り込むことができるからです。光合成は二酸化炭素と水と光で酸素と有機物と酸素を作る反応なのです。

大雨と巨大台風への対策【水・空気】

畑なら次のような対策になると考えられます。

  • 作物を植えるときに高畝にして排水性を上げておく(根が酸欠になるのを防ぐ)
  • 台風なら背の低い作物はネットをかけるなどして風と風による飛来物から保護する
  • 収穫できそうな実は収穫しておく
  • 背の高いトマトなどは防風ネットなどで風の勢いを減らす

鉢植えやプランターなら強光対策で遮光ネットなどをかけておくと、突然雹が降った時に幾分安心です。台風の時は室内に取り込んでおくなどしましょう。

渇水への対策【水】

雨どいから落ちる雨水をタンクに貯めておくと安心感が違います。雨降らないなー、暑いなーというときにタンクの水を使えば植物を水不足から守れます。

雨水を貯めておけば水道代も浮きます。マンションでは難しいかもしれませんが、戸建てで雨どいをちょっと工事できるなら雨水タンクなどを利用すると便利です。

追記【長雨や曇りにはお酢がオススメ】

お酢の酢酸には様々な効果があることがわかってきており、長雨や日照不足に効果的です。

詳しくは以下の記事でまとめています。

よろしければご一読ください。

あわせて読みたい
お酢の力で家庭菜園の日照不足・長雨対策【メーカー品でも自作でもOK】 今回は雨や曇りが続いた日(日照不足や長雨)の後でお酢を使うと作物によいという話をします。 お酢の効果 近年お酢には様々な効能があることがわかってきており、以下...

まとめ【気象リスクに備えて植物をより健康に育てましょう】

今回は家庭菜園の気象リスクについて書きました。多少資材が必要になりますが、気象リスクは年々増しているので、何らかの対策をとったほうがよいでしょう。

目次