今回は観葉植物を冬越しさせる際に、寒い夜をいかにして乗り切るかという話題の解説です。使用するのはダンボールと毛布とお風呂の残り湯、お湯を入れられる2L耐熱容器2本となります。
そもそも観葉植物には何℃が必要なのか
10℃以上はほしいですが、できれば15℃はほしいです。
当サイトでは過去にモンステラ、コーヒーの木などに特化して冬越しの話をしてきました。それが以下です。


モンステラで15℃、コーヒーの木で10℃を下回らないくらいで冬でも元気にある程度育成できます。
でも冬の室内って15℃以上で深夜も室温を維持できる家って少ないですよね?
我が家も寒い日の朝方は7℃くらいまで冷え込みます。
で、私は数年前まではコーヒーの木を低温で何本か枯らしました。
一番難しいのが朝方に10℃とか15℃を保つ方法です。
当サイトでは過去記事でヒートマットを使いましょうとお話してきました。

BRIMのヒートマットを我が家では利用しています。
センサー付きで鉢をある程度目標温度に自動調整してくれます。
ただ、いかんせん電気を使うので、寒い日はガンガン電気を食いますし、もうちょっとお財布に優しい保温方法はないものか、と考えると思います。
そこでダンボールで植物を囲うという話を聞いたことがあるかと思います。
窓辺から植物を離して、ダンボールで囲ってあげれば冷気から守られて冬越しできるっていうやつです。
ただこの話、北関東かそれより北の地域だと難しいんですよね。
家の断熱等級が5とか6とかある家なら大丈夫かもしれませんけど、普通のお家はそんな高断熱住宅じゃないわけで、我が家のように朝は7℃とか8℃まで冷え込んでしまうということもあるご家庭も多いでしょう。
今回はそのダンボール保温の仕組みをもうちょっと発展させて、エコで安全で熱力学の知見も踏まえた簡単な方法をご紹介します。
基本アイディア
いくらダンボールで植物を囲っても、周りの空気が寒ければ結局その温度にダンボール内が低温化します。
つまり「何らかの熱源」が無いと15℃とかを維持するのは無理なんです。
じゃあヒートマットをダンボールの囲いの中に入れようか?となるかもしれませんが、これってメーカー推奨の使い方じゃないので、完全自己責任になるし、ダンボール内が密室になるので高温になりすぎてヒートマットが暴走したり、一応ヒートマットには防水性能もついてますけど、なにかのはずみでショートしたりする可能性もゼロじゃなくて、ダンボールってよく燃えるので火事のもとになっちゃうんですよ。
もうちょっと安全に管理したいですよね。特に寝てる間にヒートマットの心配をするのは精神衛生上よくありません。
安全な熱源は何か無いものか?
あります。
「お風呂の残り湯」です。
火事の心配は皆無です。
しかも残り湯の熱って普通は朝まで放置されて自然環境に還っていくだけなので、ただ捨ててしまっていますよね?
この熱を最大限活用します。
残り湯は次の日に捨てちゃうものなので、たっぷり使ってもお財布が痛みません。
じゃんじゃん使っても大丈夫。40℃あればだいたい8時間くらいもちます。寝る前11時くらいにセットして朝7時に回収すれば内部は15℃程度を維持できます。早起きの方なら寝る前10時にセットして朝6時に回収することも可能です。
しかも今回使うのは「2Lの熱湯OKのピッチャー2本」です。
これならお風呂から汲み出すのも大した手間じゃありません。
これを「ある程度断熱した空間」に梱包用のプチプチを5回巻いて植物と一緒に入れます。5回ですよ?グルグル巻きです。
ダンボールは骨組みに使います。
今回はその上に「ふたつ折りにしたマイクロファイバー毛布」をかけます。植物が大きいときは二枚買ってください。
要するに毛布二枚分の厚みの断熱材として毛布を使います。
マイクロファイバーは無数の細かい繊維の集合体なので、内部に細かい空気をふんだんに含んでいて、通常の毛布より断熱性能が良いので薄くてもそれなりに温かいのですが、これを二重にすればさらに断熱性能が上がるので今回は二重で利用します。
植物の入ったダンボール内に入ってくる冷気を二重の毛布で防ぎつつ、内部に安全な熱源を配置する。
これで最も難しい冬の夜を超えて冬越しできます。
「本当かよ?」と思われるでしょうから、熱力学を駆使して計算した理論値をご紹介します。
また実際我が家では残り湯ではないですけど、石油ストーブで沸かした60℃くらいのお湯を同様の方法で容器に詰めて断熱した空間に放置しておくと、夜8時にセットして、翌朝8時まで内部空間15℃以上をキープできています。
40℃の残り湯でもできます。
ここからはその根拠を解説していきます。
計算した理論値
実際にある程度15℃以上を保てるという実験結果はあるんですけど、理論的に説明したほうが説得力があるので理論の解説をします。
例として5号鉢のモンステラが入るダンボールを考えます。大きさは「42cm × 30cm × 高さ50cm」とします。本当は30cm × 30cm × 高さ50cm」で植物だけなら入るんですけど、後述するお湯を入れるスペースのため42cmに拡張します。
この表面積は約1.0m2程度です。
次に熱の通りにくさの指標である熱抵抗値を求めます。
熱抵抗値は各断熱材の熱抵抗の和なので、各断熱材の熱抵抗を求めます。
今回は毛布2重+ダンボール1枚+箱の内外の空気の3者が断熱材として働きます。
- 毛布1重:厚み(0.015m)÷熱伝導率(0.04[W/mK])=0.015÷0.04 = 0.375m2K/W
- ダンボール:厚み(0.005m)÷熱伝導率(0.06 W/mK)=0.083m2K/W
- 内あるいは外の空気:0.11 m²K/W
これらをすべて足すと
0.375+0.375+0.083+0.11+0.11=1.053m²K/W
この逆数が熱貫流率という熱の伝わりにくさなので逆数をとって
1÷1.053=0.95W/(m2K)
熱貫流率に箱の断面積と温度差を入れれば熱負荷という箱から出入りする熱量がわかります。
温度差は内部を15℃、部屋の室温を8℃として7℃差、つまり7Kとします。
ここまで出てきた数値を使って熱負荷は
0.95[W/(m2K)]×1.0[m2]×7[K]=6.65[W]
というわけで6.7W程度がダンボールから出ていく熱量とわかりました。
内部の熱源が6.7W以上の放熱量をもっていればとりあえず内部を15℃以上に保てます。
では次が熱湯OKのピッチャーの放熱量を見積もります。
ここでも熱抵抗値を求めます。
プチプチ1重は厚み0.004m程度で、これが5重なので0.02m程度の厚みです。プチプチの熱伝導率はほぼ空気と同じなので0.04 W/mKなので、熱抵抗値は
0.02/0.04=0.5m²K/W
となります。
ピッチャー1個の表面積を約0.12 m²と仮定します。(2Lペットボトルと同程度とします)
熱抵抗値はプチプチの熱抵抗と表面空気の熱抵抗の和なので
0.5+0.11=0.61m²K/W
熱負荷はこの逆数なので
1/0.61=1.64W/m2K
となります。
ここで例えば40℃のお湯を入れたばかりのタイミングだと温度差は40℃-15℃=25Kなので
1.64×0.12×25=4.9W
となります。ピッチャーが2本あれば9.8Wになり、ダンボールから出ていく熱量6.7Wを上回るので内部を15℃以上に維持できます。
じゃあ40℃のお湯4Lが何時間保つのかという計算をしていきます。
今回は8時間もってほしいので、計算した結果8時間後に箱の中が15℃程度になるならOKとします。
箱の熱の通しやすさ\(K_{box}\)
$$K_{box} = 0.95 \times 1.0 = 0.95 \text{ W/K}$$
ペットボトルの熱の通しやすさ\(K_{bot}\)(ペットボトルの合計表面積は0.24m2とします)
$$K_{bot} = \frac{0.24}{0.61} \approx 0.393 \text{ W/K}$$
システム全体の「熱の逃げやすさ\(K_{eff}\)」
$$K_{eff} = \frac{K_{bot} \times K_{box}}{K_{bot} + K_{box}}$$
$$K_{eff} = \frac{0.393 \times 0.95}{0.393 + 0.95} \approx 0.278 \text{ W/K}$$
4Lのお湯の「熱の貯金(熱容量 Cw)」
水4L(4000g)が1℃温度を下げる時に放出する熱エネルギー(ジュール)です。水の比熱は \(4.184 J/g K\) です。
$$C_w = 4000 \times 4.184 = 16,736 \text{ J/K}$$
ここで「ニュートンの冷却の法則(微分方程式の解)」を使います。温度は直線ではなく、カーブを描いて(指数関数的に)下がるため、自然対数の底 e を使った以下の式になります。
t は8時間(28,800秒)、室温 Tr は 8℃、初期水温 \(T_{w0}\) は 40℃ です。
$$T_w(t) = T_r + (T_{w0} – T_r) \times e^{-\frac{K_{eff} \times t}{C_w}}$$
数値を当てはめます。
$$T_w(28800) = 8 + (40 – 8) \times e^{-\frac{0.278 \times 28800}{16736}}$$
$$T_w(28800) \approx 8 + 32 \times 0.620 \approx 27.84^\circ\text{C}$$
8時間後の水温は、約 27.8℃ になることが導き出せました。
最後に、水温が 27.8℃ になった瞬間に、箱の中の温度が何度でバランスするかを計算します。
「ペットボトルから箱へ出る熱」と「箱から部屋へ逃げる熱」が釣り合う温度を探すため、以下の加重平均の式を使います。
$$T_b = \frac{K_{bot} \times T_w + K_{box} \times T_r}{K_{bot} + K_{box}}$$
数値を当てはめます。
$$T_b = \frac{0.393 \times 27.8 + 0.95 \times 8}{0.393 + 0.95}$$
$$T_b \approx 13.8^\circ\text{C}$$
まあ14℃くらいに下がっちゃいましたけど、安全性と手軽さを考えれば十分じゃないでしょうか?
もっと保たせたいならお湯の初期温度を50℃くらいに上げる(つまりお湯をちょっと沸かして足す)か、毛布を3重か4重にしてください。
もっと本格的にやりたいならスタイロフォームとか発泡スチロールの板がホームセンターで入手できるので、毛布をそれに変えて3cmの厚みで囲いを作ってください。周囲だけじゃなく、上下にも断熱材を入れるのを忘れずに。
計算は割愛しますがそのくらいの厚みで同等の性能になります。
なおダンボール+毛布にせよ発泡スチロールにせよ、隙間があると性能がガタ落ちするので、隙間を塞ぐような工夫をしましょう。
ダンボールと毛布なら上からかぶせるでしょうから、特に床との接地面に隙間ができないようにかぶせ方を工夫しましょう。
また発泡スチロールの場合、接続にガムテープなどを使うと思いますが、ガムテープの隙間ができないようにガッチリ接着してください。
発泡スチロールとかスタイロフォームに関しては爬虫類とか昆虫の温室作成をしている人がいるのでそういうYouTubeを参考にしてもいいでしょう。
上の動画では正面から観察できるように正面には透明ビニールが使われますけど、夜の植物の保温だけならそこも発泡スチロールとかスタイロフォームで塞いでしまって上からカポッとかぶせる構成で問題ありませんし、断熱性能も飛躍的に高まります。
まとめ
今回は観葉植物を冬越しさせる際に、寒い夜をいかにして乗り切るかという話題の解説でした。
お手軽な方法としてダンボールと毛布、耐熱ピッチャーという構成にしました。
冬の観葉植物の夜の冷えをなんとかしたい、でもヒートマットの電気がもったいないというときに検討してみてはいかがでしょうか。
