今回は雨や曇りが続いた日(日照不足や長雨)の後でお酢を使うと作物によいという話をします。
お酢の効果
近年お酢には様々な効能があることがわかってきており、以下のような効果があると言われています。
- 日照不足の後に散布すると効果的
- 長雨の後に散布すると根の傷みの回復がスムーズになる
- 病害虫の予防効果
日照不足への効果
日照不足になると、光合成ができないので炭水化物の生成が滞ります。炭水化物は植物の栄養で、葉や茎を作る原料なので、炭水化物が足りないと作物の成長が抑制されます。
ところが、酢の主成分である酢酸は炭水化物なので、これを根や葉に散布することで不足していた炭水化物を補うことが可能となり、作物の成長が良くなると言われています。(参考:現代農業8月号(一般社団法人農山漁村文化協会、2021年8月))
長雨のあとの根の傷みを回復させる
水を頻繁に大量に植物に与え続けると、根は常に水に浸っている状態となり、「根腐れ」して傷みます。
この状態を回復させるには作物が光合成で作り出した炭水化物を利用するのですが、長雨の後でも植物は成長しようとするので、成長に炭水化物が使われてしまいます。
すると根の修復に十分な炭水化物が回ってこない状態となり、この傷んだ状態では土の中のミネラルが吸収できないので、ミネラル不足で光合成もできず、炭水化物の生産もできなくなるので、一瞬は成長できるかもしれませんが、中・長期的にみると炭水化物とミネラルの不足で結局植物の生育が阻害されます。
しかし酢を散布すると酢が植物ホルモンのような働きをして、植物の成長を抑制します。すると成長に使うはずだった炭水化物を根の修復に回せるため、根の回復が早くなり、結果ミネラルを吸い上げる力が早く回復するので植物の成長が良くなります。(参考:現代農業8月号(一般社団法人農山漁村文化協会、2021年8月))
植物の根の成長に食酢が効果的というのは別の文献でも示されています。
草丈については食酢散布区と対照区との間で差は認められなかったが,根長は明らかに促進されており,危険率1%のt-検定において有意な差が認められた。
円谷 悦造, 伊東 一博, 川村 吉也, 大野 正司, 吉田 重方, 食酢による芝草病害の防除, 芝草研究/20 巻 (1991-1992) 1 号 p. 45-50
芝草の例ではありますが、食酢が植物の根に効果がある可能性が示されています。
病害虫予防
実際にお酢を利用した殺虫殺菌スプレーというものが販売されており、「やさお酢」(アース製薬)、「ピュアベニカ」(住友化学園芸)という製品名で販売されています。
やさお酢の商品ページでは病害虫への効能として「アブラムシ、ハダニ、コナジラミ、アザミウマ(予防)、うどんこ病、灰色かび病」に効果があるとされています。(参考:アース製薬, アースガーデン やさお酢 1000ml)
実際食酢は農薬取締法第2条において「特定農薬」として規定されています。
特定農薬は、改正農薬取締法第2条第1項において「その原材料に照らし農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなものとして農林水産大臣及び環境大臣が指定する農薬」と定義付けられています。
〔……〕
同分科会では、寄せられた情報のうち、雑草抑制シ-トやアイガモ、アヒル、ウシ、コイなどはもともと農薬ではないので特定農薬の検討対象から除外され、残ったものについて、その指定の可否の検討が行われた結果について、まずはその時点において殺菌効果を持つことが明らかであった重曹と食酢、及び地場で生息する天敵について特定農薬に指定することが適当であるとの結論が得られ、これが審議会としての答申となりました。
農林水産省, 特定農薬とは?
「農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなもの」のうち「殺菌効果を持つことが明らか」なので指定したとあるので、殺菌効果があり、農産物や人畜及び水産動植物に害のない安全なものということになります。
これだけ書くとすごいもののような印象を受けますが、殺菌効果のある作物と無い作物が存在し、たとえばリンゴの有機栽培ではその効果は限定的であるとする文献も存在します。
これまでに,本報告と同じ食酢(清泉-15)の 100 倍希釈液散布が褐斑病に対してある程度の防除効果が期待できるとの報告がある(11)が,本試験における 2011 年,2012年の発生状況からみて,有機栽培園において実用的な防除効果があるとは言い難いと考えられる.
花岡 朋絵, 赤平 知也, 木村 佳子, 山本 晋玄, リンゴの有機栽培のための病害虫防除体系の組み立てとその評価, 北日本病害虫研究会報/2014 巻 (2014) 65 号 p. 104-110
また濃度によって効く病原菌の種類が異なるという研究もあります。
しかし,その阻止濃度は病原菌種によって大きく異なり,R.solaniやF.roseum, Helminthos: porium sp.ではP.aphanidermatumに比べて高濃度の食酢液を必要とした。
円谷 悦造, 伊東 一博, 川村 吉也, 大野 正司, 吉田 重方, 食酢による芝草病害の防除, 芝草研究/20 巻 (1991-1992) 1 号 p. 45-50
食酢を水で薄めるだけで食酢の散布は可能ですが、はっきりとした濃度は決めがたいので、心配なら販売されているお酢のスプレーを買ったほうが確実と思われます。むしろそれが理由で殺虫剤メーカーはお酢のスプレーを販売しているのでしょう。
どのくらいの希釈倍率ならいいのか
適当に食酢を水で希釈すればよいように考えたくなりますが、あまりにも酢の濃度が高い(希釈倍率が低い:100倍よりも5倍とか10倍とか)と除草効果が表れて作物が枯れてしまいます。
ものすごく強力な酸性雨を浴びている状態を想像してください。作物は生きられません。
つまり適切な濃度があるということです。
酸度4.2%程度の食酢の適切な濃度は以下と言われています。
参考:現代農業8月号(一般社団法人農山漁村文化協会、2021年8月)
- 病害虫予防:200倍~400倍(参考:味の素ヘルシーサプライ株式会社, 農業における木酢液の特徴や役割とは?効果的な使い方について解説より、木酢液と食酢を類似の酸度と想定して算出)
- 生育促進(日照不足):100倍以上
- 根の修復:30~50倍
5倍以下では除草効果が出てしまうので濃すぎる濃度は避けましょう。
我が家の食酢を散布したバジルの様子
我が家でもお酢を散布してみました。以下が植えてから2か月後の我が家のバジルです。

植えてからしばらくして虫食いが目立って葉がボロボロになったのですが、晴れの日の朝、雨の翌日などに100倍くらいに薄めた酢を定期的に散布していたら虫食いがなくなって葉が回復しました。
まとめ【日照不足・長雨対策にお酢を利用してみては?】
今回は日照不足・長雨対策にお酢を利用してみるといいかもしれないという話をしました。
お酢には植物を元気にする力があるようです。
濃すぎる濃度(5倍以下)だと害となりますが、適切な濃度でよく薄めて散布すれば有益です。
お酢を有効利用して家庭菜園をパワーアップさせてみてはいかがでしょうか。