今回は生ごみ堆肥化(コンポスト化)で最大の問題となる「塩分濃度」「油分」つまり塩化ナトリウム濃度と油分の濃度に関する解説です。
生ごみ堆肥化で問題になること

まず生ごみ堆肥化(コンポスト化)で遭遇する問題点を「技術的」「運用的」に分けて総合的に確認します。
コンポストの技術的な問題点
まとめると以下のようになります。
- 生ごみが原料なので塩分「塩化ナトリウム」がある程度含まれている。これが生理障害の原因になる
- 油分も同様に含まれておりこれが生理障害の原因になる
- 失敗すると悪臭が発生する
- 虫(コバエ・ゴキブリ・ゴミムシなど)の発生
- 発酵が不十分だと土に施したときに窒素飢餓を起こして作物の生育を阻害する
この後の節で塩分と油分について述べますが、そのほかについても概要を解説しておきます。
生ごみコンポストではある程度技術が必要です。
まず水分管理は重要で、水分過多では嫌気性発酵が支配的になり悪臭が発生するし、水分不足ではそもそも微生物の分解が進みません。適度な水分(60%程度)の運営が必要です。
次に害虫です。まず室内でふたをせずに段ボールコンポストなどをするとコバエがほぼ確実に発生します。また蓋をしないことによってゴキブリやゴミムシが発生します。生ごみはこれらの害虫の好物です。室内コンポストでは特に注意すべき問題です。
最後が窒素飢餓。土壌微生物が土を豊かにして土の団粒構造をうまく作ってくれるわけですが、この微生物は土の中の窒素と炭素をエサに増殖し団粒構造を作ります。しかしながら炭素が多すぎると微生物は「炭素がある!増殖だ!」となってとにかく増殖しようとします。その際土の中の窒素を見境なく使います。すると土の中の窒素がなくなって作物に必要な窒素が不足してうまく作物が育たないという現象が起きます。
これを避けるために堆肥化(コンポスト化)の過程である程度微生物に生ごみの炭素を分解してもらって、炭素を減らしてちょうどよいくらいの炭素量にしてから土に施すと窒素飢餓が起きにくくなります。
ここまでの話は以下の記事で取り扱っています。


コンポストの運用的な問題
まとめると以下のようになります。
- そもそも家庭菜園をしないのでコンポストはいらない。
- 生ごみ処理機で生ごみを減量する手間とお金と時間をかけるくらいなら、週二回ある程度重いゴミ袋をゴミ出ししたほうが楽
家庭菜園をしないのでコンポストはいらないという場合もあるかと思います。ただ生ごみは重いので、ゴミ出しのゴミ袋を軽くするという視点で生ごみ処理機を使うと便利ではあります。

また生ごみは水分を多く含んでいますし、可燃ごみの中で生ごみが占める割合も高いので、ゴミ処理場とゴミ収集車の負担を減らすという視点でコンポストをするとか、生ごみを減量するというのは良い取り組みです。
ゴミ処理場で生ごみを焼却するときに生ごみの水分を飛ばすために大量の化石燃料が必要です。また生ごみが大量にあるとゴミ収集車はそれを運搬するために燃料を消費します。これは主に化石燃料です。
生ごみ処理機やコンポスト容器で生ごみを乾燥させたり発酵させたりすると、生ごみの水分が蒸発して減量し、発酵の場合生ごみの炭素分も分解されて二酸化炭素になって排出されます。
ゴミとして出す前に生ごみを減量できればSDGsに貢献できます。
ただし生ごみ処理機を使う場合、電気を使うことが多く、この電気が化石燃料由来の電気だと本末転倒です。これは家庭で太陽光発電を取り入れてその電気を使うとか、自治体が再生可能エネルギーの割合を増やすとかそういう施策が必要で今後の課題となっています。

塩分と油分の問題【生ごみコンポストは二次発酵させれば問題ない】

ここからは塩分と油分について解説していきます。
塩分・油分とも多すぎると作物に生理障害が発生します。
例えば小松菜の場合、塩分(塩化ナトリウム)の上限値は5%、油分の上限値は10%となっています。(参考1:和歌山県, 農業試験場, 生ゴミリサイクル堆肥の塩分・油分含量の上限)
参考1によると、和歌山県の生ごみ堆肥の塩分は上限値以下、油分はたまに上限値をオーバーするという結果でした。
県内で生産された生ゴミ堆肥は、乾物あたり塩分で 0.26~2.28%とすべて 5%以下でした。
参考1:和歌山県, 農業試験場, 生ゴミリサイクル堆肥の塩分・油分含量の上限
油分は 0.11~13.79%であり、10%を超えるものがありました(図1)。
このことから塩分はクリアしています。
また油分はコンポストの微生物によって分解されるので、分解されていれば特に問題ないです。
ただし、参考1のデータでは堆肥化したものが10%オーバーでした。参考1の注意書きに「または2次堆積により油を分解後施用する必要があります」とあるので要するに二次発酵させればよいようです。
コマツナの発芽試験では、油分を添加したコンポストは2次発酵までさせれば、油分の添加量が36%までは、発芽総合評価点数は8点以上であり、コマツナの発芽に影響がないものと推測された(図3)。
金 元淑, 後藤 基寛, 入江 満美, 山口 武則, 牛久保 明邦, 食品廃棄物コンポストに由来する油分および塩分がコマツナの生育に及ぼす影響, システム農学/24 巻 (2008) 3 号
ここで2次発酵とは何かというと、以下のような発酵の第二段階のことです。
二次発酵は堆肥の「熟成期間」とも呼ばれ、一次発酵で分解しきれなかった有機物を、30~40℃程度で数カ月間かけてゆっくり生物分解する工程です。
〔……〕
最終的に均質・良質で衛生的な堆肥が完成します。
国立環境研究所, 固形廃棄物の堆肥化処理における微生物反応
要するに微生物による発酵は「1次発酵」の後に「2次発酵」へと進みます。1次発酵では分解されやすいものが一気に分解される反応で、これだけでも堆肥になりますが、2次発酵まですれば分解されにくいものまで分解され、堆肥の均質化・良質化・衛生化が高まります。
二次発酵のやり方は以下の動画などを参考にするとよいでしょう。
ただ冷静に考えてみると、生ごみ堆肥と言っても、一般流通する生ごみ堆肥は弁当の残りとかが入っているわけで、そういうものに使われた食用油が油分を高めているはずです。
家庭で野菜を切った切れ端や皮だけを生ごみ堆肥にすれば油分ってあまりないんじゃないでしょうか。
実際我が家のコンポストは弁当の残りや調理済み食品を全く入れない生ごみコンポストです。それで普通に二次発酵せずに家庭菜園に使っていますけど、ちゃんとトマトやナスが収穫できましたよ。

生ごみとして投入するものに油分がないものを選べばそこまで恐れる必要はないと思います。
まとめ【生ごみ堆肥の塩分と油分の問題は解決できる】

今回は生ごみ堆肥の問題点としてよく挙げられる、塩分と油分という問題に関する解説を行いました。
油分に注意が必要な場合がありますが、二次発酵するか、生ごみとして投入するものに油分のあるものを選ばないよう工夫すればほとんど解決すると思います。
また塩分は特に気にしなくても問題ない濃度のようです。
生ごみ堆肥は自治体でも推奨されているSDGsな活動です。
塩分と油分の問題で踏み切れていないなら今回の記事を参考にしてみてください。
