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太陽光発電の今後【ペロブスカイト・透明・垂直型の活用】

今回は太陽光発電の未来の活用例をまとめるという内容です。

目次

太陽光発電の今後の技術

太陽光発電は太陽光を利用して発電するため、化石燃料を使用する発電よりサステナブルであると言われています。

SDGsでも目標7として「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」という目標に貢献するクリーンなエネルギーと言われています。

そんな太陽光発電ですが、研究が盛んにおこなわれており、新技術の実用化が近づいてきました。今回は太陽光発電周りの新技術についてまとめていきます。主に以下の内容を扱います。

  • ペロブスカイト太陽光発電
  • 透明太陽光発電
  • 垂直設置型太陽光発電

現状の太陽光発電の課題

まず現状のシリコン系太陽光発電の何が課題であるかを解説します。その後それを解決するために何が研究されているかという話をします。

現状の課題は主に以下のような内容にまとめられます。今回は世界の問題というよりも日本の問題に注目します。

  • 用地不足
  • 材料
  • 価格
  • 発電時間帯

現状の課題【用地不足】

太陽光発電は太陽の光を受け取らなければ発電できないので、広大な「光の当たる」用地を必要とします。

広大な光の当たる用地として以下の場所がソーラーパネルで埋め尽くされます。

  • 湖や海
  • 農地(だったところ)

林業にも使用できないような山を所有している多くの権利所有者の土地活用として太陽光発電が利用されています。

しかしながら山は景観との兼ね合いが難しい用地です。例えば日本百名山などの用語がありますよね。山は登山だけでなく、遠くから見たその雄大な景観が観光資源だったりするのです。

そこを切り開いてソーラーパネルが山を覆いつくすと、観光資源である山の景観が損なわれるので、現在山へのメガソーラーの導入に対して反対運動が起きていたりします。

また海や湖にメガソーラーを導入することも始まっています。ただし大きな湖は日本中に多数あるわけではなく、海も台風などの高波や潮風による劣化など技術的にソーラーパネルを設置するために克服しなければいけない問題が存在します。

さらに農業従事者の高齢化などで耕作放棄地になった農地を太陽光発電の用地に利用するというのも盛んです。しかしながらこれは食糧安全保障上望ましくありません。

また、近年、世界的な食料需給の変化と生産の不安定化により、食料供給が大幅に減少するリスクが高まる中、食料供給が減少し、国民生活・国民経済に影響が生じる事態を防止するため、平時からの対応に始まり、必要な対策を政府一体となって早期から措置できるよう、令和6年の通常国会に「食料供給困難事態対策法案」を提出しました。

農林水産省, 食料安全保障について

輸入に頼る現在の日本の食糧事情は海外の災害や紛争で食糧供給が滞ると危機的な状況になる可能性があります。そうならないために食糧自給率を上げる必要があるのですが、肝心の農地が食糧ではなく電気だけしか作れない、では自給率は低いままです。ソーラーシェアリングという方法もありますが、今後耕作放棄地で農産物を作らずに太陽光発電だけ設置するような状況が増えると、問題になるのは想像に難くありません。

このように太陽光発電は用地が足りないという問題があります。

現状の課題【材料】

現在主流のソーラーパネルは「シリコン系」がほとんどです。シリコン自体は大量にあるのですが、日本ではそのほとんどを中国からの供給に頼っています。

シリコンの供給が滞るとソーラーパネルが作れなくなります。

そうすると食糧の問題同様に、生活インフラである電気の供給が不安定になります。ソーラーパネルは10年程度で交換する必要があるからです。パネルを交換したいのにパネルが作れないでは大変です。

現状の課題【価格】

年々ソーラーパネルの価格は下がっています。10kW-50kWの比較的小さい事業用太陽光発電のシステム費用平均値は2012年で約42万円/kWだったのに対し、2022年では24.7万円/kWとなっています。(参考:|資源エネルギー庁, 太陽光発電について

とはいえこれを参考に家庭向けに5kW程度のシステムを導入しようとすると約100万円程度かかる計算になります。

価格が下がっているとはいえ、気軽な価格ではありません。

現状の課題【発電時間帯】

基本的に太陽光発電は日光が届く時間帯しか発電できません。蓄電システムを用いないと、太陽がよく降り注ぐ昼の時間帯に発電した電力が集中して使いきれなくなります。

太陽光発電の出力制御のニュースが頻繁に流れています。太陽光発電で作った電力はうまく使いきれていないのが現状です。

課題を克服する新しい太陽光発電技術

ここからは上記の課題を解決するかもしれない太陽光発電の新技術について解説していきます。

ペロブスカイト太陽光発電

近年盛んにPRされている新しい太陽光発電です。メリットは以下のようになります。

  • 簡単に曲げられるので設置用地が拡大できる(用地の拡大)
  • 塗布技術で作成可能で製造コスト低減可能(価格の低下)
  • 原材料にシリコンを使わずにヨウ素メインで作れるので日本向け(材料の安定供給)

ペロブスカイト太陽電池はフィルム状に製造できるので、薄く曲げる用途に使用できます。これによって曲面の構造体、例えば自動車の天井などの「曲面で日光が当たる」場所にソーラーパネルを設置できるので、太陽光発電の用地が新たに拡大されます。

また塗布、印刷技術で製造できるので、シリコン系太陽電池ほど複雑な製造プロセスが不要となり製造コストが現状より低くできると言われています。

課題で挙げたようにシリコンは中国が大きなシェアを持っていますが、ヨウ素は日本が世界2位のシェアを持っているので、エネルギー安全保障の点からヨウ素で作れるペロブスカイト太陽電池は日本向けの太陽電池となっています。

ペロブスカイト太陽電池の主な原料であるヨウ素は、日本の生産量が世界シェアの約3割を占めており、世界第2位です(第1位はチリで約6割)。

資源エネルギー庁, 日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)~今までの太陽電池とどう違う?

しかしながらデメリットもあり、以下のような課題があります。

  • 寿命がシリコン系ほどない
  • 有害物質である鉛を必要としているものがメイン

現状ではペロブスカイト太陽電池はシリコン系より寿命が短いと言われています。

また鉛を使用するタイプが研究のメインになっており、鉛フリーにするための研究が盛んに行われていますが、まだ発展途上です。

とはいえこれらの課題に対する研究は盛んに行われているので、将来的には解決するかもしれません。

透明太陽電池

透明な太陽電池も研究が盛んです。ソーラーパネルが透明になると発電しないのではないかと考えるかもしれませんが、これは赤や青の可視光だけ透過して、非可視光である紫外線や赤外線を発電に利用することで発電を可能としています。

主な用途は以下となります。

  • 窓ガラスで発電
  • 農業用ハウスへの応用

窓ガラスは基本的に光を屋内に取り込むための装置です。しかしながら必要な光は可視光だけであり、室内が明るくて、外の様子が見えれば問題ないわけです。

そこで未利用の赤外線や紫外線を発電に利用して、発電を行えれば、窓ガラスという世界中に存在する装置が太陽光発電の新たな用地になります。例えば都市のビル群の窓などは想定される用地です。

また植物が光合成に利用する光の波長は、ほぼ可視光の波長である400~700nmです。

日射の波長は 150 ~ 3000nm の範囲にあり、そのうち植物が光合成に利用する光合成有効放射の波長は 400 ~ 700nm です。

国立研究開発法人 森林研究・整備機構, 植物が光合成に利用可能な光の量の新たな推定法

赤外線の波長は780nmより長い波長、紫外線は100~400nm程度の波長です。つまり光合成に利用する波長はほぼ可視光で、可視光より長い波長が赤外線で、可視光より短い波長が紫外線です。

透明太陽電池は植物が利用する波長は透過してビニールハウス内に届け、透過しない発電に使う植物が利用しない波長の光を電気に使います。つまりビニールハウスと相性が良いのです。

ビニールハウス内の加温などをすべて透明太陽電池でまかなうのは難しいかもしれませんが、売電すれば多少の収益になり、ハウスの制御(室温や湿度などのモニタリングやビニールの開閉など)くらいなら発電した電力でまかなえるかもしれません。

課題のところで耕作放棄地を太陽光発電の用地にすると食糧安全保障上あまりよくないと述べましたが、透明太陽光発電を利用すれば発電と作物の生育を両方実現できる可能性があります。

ただしビニールハウスの用途である温室効果によるハウスの加温という用途も削ってしまう可能性があるので、あくまで可能性としてそういう実験が今後行われるかもしれない、くらいの話となります。冬場の日中などは赤外線もどんどんハウスに取り込んで加温したほうがよいですし、そうすると冬場はパネルを外して、夏に遮熱と発電目的で使う、みたいな用法になるかもしれません。

するとガラスに埋め込んだようなモジュールは適さず、薄いパネルをビニールハウス内に遮光カーテンのように吊り下げるような用途になるかもしれませんね。季節によってパネルを付けたり外したりする必要はあるかもしれません。

透明太陽電池は実証実験の段階で、実用化はもう少しかかるようです。

当窓パネルは、紫外線と赤外線をエネルギー源とする高効率の発電が可能であり、一般的な窓と同程度の透明度を維持しつつも、遮熱性と断熱性に優れていることから、建物の高いエネルギー効率を実現します。

ENEOS, YKK AP, JR東日本, NSG, 高輪ゲートウェイ駅構内における透明太陽光発電窓パネルを使用した実証実験の開始について

※追記:農業用ハウスと相性がいいと書きましたが、いちごなどとの相性は微妙です。

というのもいちごは赤くなるのに日光の光、特に紫外線が必要で、透明太陽光発電と資源を取り合ってしまいます。紫外線が弱いとアントシアニンの合成が弱くなって赤くならないのです。

またいちごの受粉に必要なミツバチも紫外線を利用するのでイチゴと透明太陽光発電の相性は良くないですね。

作物の生理をよく理解して、紫外線や赤外線が不要な作物を育てるとか、完全に太陽光発電パネルで天井を覆わずに、太陽光が降り注ぐ面を確保して、遮ることができるギリギリの境界値を見つけるなど研究が必要と思われます。

ソーラーパネルのある場所とない場所をどう配置するか、というのは色々なパターンが存在し、結構難航するでしょう。

パネル自体がやっと作れるようになってきた現状ではまだまだ未来の技術になりそうです。

垂直設置型太陽光パネル

太陽光発電を垂直に設置するというアプローチも存在します。メリットは主に以下となります。

  • 東西に垂直に設置することで発電のピークを朝と夕に持ってこれる
  • 雪に強い
  • カーポート型よりコストが安い場合がある

普通ソーラーパネルは屋根の南に設置します。すると太陽が昼頃もっともパネルに当たるので昼に発電のピークが来ます。そしてこういう南に設置したパネルが日本中にあります。

そこで南北ではなく、90度回転させ、東西の光が当たるように垂直に設置します。

すると東と西の太陽光である朝日と夕日がよく当たるようになります。つまり発電のピークが朝と夕方になって他のソーラーパネルのピークである昼間とぶつからなくなります。

余っていない朝と夕方に電気を流せるので電気を有効利用することができます。主な用地は駐車場や道路のほか、日光の当たる量が農地ほどシビアでない牧草地などとなります。

また垂直に設置すればパネルの上に雪が積もりにくいので雪が降る関東より北の東北や北海道で雪の重さでパネルが壊れるリスクが減ります。

そしてカーポートの上に設置するとパネルが乗るための広い台が必要になりますが、垂直型なら支柱が二つあれば設置できるのでコストで優位に立つ可能性があります。

ただしカーポート設置型にも車の遮光や雹などからの保護というメリットがあるので適材適所です。

実用化はエア・ウォーター株式会社でドイツの企業と一緒に実現されています。

「エア・ウォーター, 世界初、駐車場などと併用可能な垂直ソーラー発電システム「VERPA(ヴァルパ)」を開発 ~ 垂直型で場所を取らず、豪雪地帯にも導入可能 ~

新しい太陽光発電技術の実用化はいつ?

気になるのが新しい太陽光発電技術の実用時期ですよね。メリットがある新しい太陽光発電技術が今後10年くらい実用化されないなら、現状のシリコン系太陽光発電を屋根に乗せたほうが長い期間メリットを得られます。電気代もどんどん上昇していますからね。

新しい太陽光発電の実用化をまとめると以下となります。

結論から言うと近いうちに実用化される可能性が高いですが、家庭用に流通するにはまだかかるものが多いと言えそうです。

  • ペロブスカイト太陽電池:2025年ころ事業化を目標
  • 透明太陽電池:情報なし。実証実験段階
  • 垂直太陽光発電:エア・ウォーターで事業化済み。2023年5月から販売

ペロブスカイト太陽電池は2025年ごろから実用化され始める可能性があります。

並行して、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金を活用し、1m幅での製造プロセスの確立、耐久性や発電効率のさらなる向上に向けた開発を進め、2025年の事業化を目指します。

積水化学工業株式会社, 東京都との港湾施設における国内最大規模のフィルム型ペロブスカイト太陽電池の検証について

また透明太陽電池の実用化はまだ先になりそうです。2024年6月の状況では実用化に関する情報は得られませんでした。

また垂直太陽光発電はエア・ウォーター株式会社で実用化済みです。

「エア・ウォーター, 世界初、駐車場などと併用可能な垂直ソーラー発電システム「VERPA(ヴァルパ)」を開発 ~ 垂直型で場所を取らず、豪雪地帯にも導入可能 ~

ただしいずれの技術もコスト的に現状のソーラーパネルに並ぶ時期はわかりません。基本的に新技術は理論的に実現できても大量生産するための製造方法のイノベーションが必要で、シリコン系太陽光発電でも価格が半分になるのに10年かかっています。

現状ではコストをあまり考慮せずクリーンエネルギーの導入をPRする目的で自治体や企業で導入されているのが現状です。

家庭用としてシリコン系太陽電池より低コストでペロブスカイトや透明のソーラーパネルが流通するには10年くらい待たないといけないかもしれませんね。

ただし研究は日々盛んに行われているので、もしかしたら近い将来実用化されるかもしれません。はっきり読めないのが現状です。

ちなみにペロブスカイト太陽電池は注目度が高く、情報も多く出ており、2030年に社会実装を目指して関係団体が動いています。

政府も活用に向けた取り組みを後押ししており、「グリーンイノベーション(GI)基金」(令和2年度第3次補正予算にて国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構[NEDO]に造成した2兆円の基金)において、「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」(498億円)を立ち上げ、2030年の社会実装を目指しています。

資源エネルギー庁, 日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(後編)~早期の社会実装を目指した取り組み

シリコン系の価格も下がっている

現状の太陽光発電のコストはかなり下がってきており、2030年には火力や原子力を下回る場合もある予想です。

石炭火力原子力太陽光(住宅)
2020年12.5円/kWh
(12.5)円/kWh
11.5~円/kWh
(10.2~)円/kWh
17.7円/kWh
(17.1)円/kWh
2030年予測13.6~22.4円/kWh
(13.5~22.3)円/kWh
11.7~円/kWh
(10.2~)円/kWh
8.7~14.9円/kWh
(8.5~14.6)円/kWh
資源エネルギー庁, 電気をつくるには、どんなコストがかかる? を基に当ブログ管理人の陽が加工して作成, ()内は政策経費なしの値

このことから住宅用の太陽光発電は価格が下落していくので、太陽光発電はシリコン系でも安い電源と言えます。

太陽光発電のコストが直線で下落していくと想定すると、17.7円が8.7円になると差額は9円となり、毎年0.9円下落すると考えられます。

すると2024年は3.6円下がって、14.1円程度となるでしょう。2025年には13.2円くらいになり、石炭火力くらいになる予想です。

2024年の太陽光発電の設置コストはパネル価格の下落で今後まだ下がる可能性はありますが、インフレや人件費の増大から相殺される可能性もあり、微妙な状況と言えるでしょう。

一応現状でもいいやと考えているなら、以下のソーラーパートナーズがおすすめです。

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まとめ【新しい太陽光発電技術はもうすぐお目見えかも】

今回は太陽光発電に関して、現状の課題は何なのか、それを解決するかもしれない新しいソーラーパネルはどんなものなのか解説しました。

正直太陽光発電を屋根に乗せる時期として今が適切なのかというのは予想が難しい問題でした。

しかしながら現状の太陽光発電の課題とその対策技術は色々出てきていて、もうすぐ社会に現れてくるでしょう。

今回の記事でなんとなく太陽光発電の将来が垣間見えたら幸いです。

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