今回は蓄電池の価格推移に関する業界レポートみたいな内容です。
蓄電池高すぎ問題
蓄電池はあると確かに太陽光発電の余剰電力を夜使うことができて節約に貢献します。
しかしながら現在の家庭用蓄電池は本体料金と設置コスト両面で料金がかかりすぎて、元を取るのに15年くらいかかると言われています。
簡単なシミュレーション結果をお示しします。ソーラーパネルは1kWの容量で年間1100kWh発電するとします。
- ソーラーパネル7kWを屋根に乗せる(年間発電量は7,700 kWh)
- 日中の直接消費(年間):1,000 kWh(日中に家電を動かして消費する電気量)
- お日様エコキュート使用電力:1800kWh
- 蓄電池年間蓄電量:1800kWh
- 余剰電力の売電(年間):3100kWh
これを電気代を35円/kWh、売電価格を16円/kWhと仮定して計算してみると、このシステムの利益は以下となります。
- 日中の直接消費(年間):1000×35=35000円
- お日様エコキュート使用電力:1800×35=63000円
- 蓄電池年間蓄電量:1800×35=63000円
- 余剰電力の売電(年間):3100×16=49600円
- 年間合計メリット:約210,600円
そしてこのシステムにかかる費用をまとめると以下となります。
- 太陽光パネル 7kW:約140万円
- 蓄電池(約7kWh):100万円(補助金を最大限活用の場合)
- お日様エコキュート:42万円(補助金を最大限活用の場合)
- 合計:約282万円
282万円のシステムを年間21万円で運用すると、答えは13.4年となります。14年くらいで元が取れる計算です。まあパワコンの更新費用もかかるので15年くらいというのはある程度妥当でしょう。
というわけで、だいたい元を取るのに15年くらいというのが現代の数値として見えてきます。
ここで考えたいのが蓄電池の価格です。補助金込みで100万円。これがもうちょっと将来的に安くなるのか、という話。
現在のシナリオ
2030年くらいを目安に以下の流れが進むと考えられています。
- 電気自動車の使用済みバッテリーを流用した家庭用蓄電池の台頭
- リチウムイオン電池からナトリウムイオン電池へのシフト
電気自動車の使用済みバッテリーを流用した家庭用蓄電池の台頭
家庭用蓄電池がなぜ高額かといえば、「リチウムの争奪戦が世界中で起きているから」です。
電気自動車にも系統用蓄電池にもリチウムイオン電池が使われるので需要が膨らみ結果として家庭用蓄電池の価格も押し上げられます。
しかし、2026年現在、これまで市場投入された膨大なEVに使われたリチウムイオン電池が使われないまま放置されています。
例えばこの使用済みリチウムイオン電池を企業が処理しようとすると、再処理事業者に回す必要があり、だいたい1kWhあたり1万円以上企業がお金を払って処理してもらうことになります。
これを中古蓄電池のリユース事業者が「私達は無料(または格安で)でそれを引き取りますよ」と企業に持ちかけます。
当然企業はリユース業者に回すでしょう。
リユース業者は以下の処理をした後家庭用蓄電池として使用済み蓄電池を売り出します。
- バッテリーの再資源化処理(だいたい1万円/kWhと推定される)
- バッテリーの輸送費やパワコン費、バッテリー制御機器費用、設置費など(だいたい5万円/kWhと推定される)
ここから単純に考えると1kWhあたりのリユース価格の下限は約60000円/kWhとなります。
これを7kWhとして売り出したら60000円×7=420000円となります。
つまり単純に考えてこれまで100万円かかっていたところ、約42万円くらいで済む可能性があるわけです。利益幅を乗せても50万円くらいになる可能性があります。
これがいつくらいまでに実現するかという話ですが、2030年ころと予想されています。
つまりもう少し待つと家庭用蓄電池は現在の半分くらいの価格まで下がって、それを10年とか15年で買い換えるようなシステムに変貌する可能性があるわけです。
あくまで予想ですが。
推定値の算出ロジック
本当に半分になるのかよ?という疑問はもっともなので、その算出ロジックを載せておきます。
まずバッテリーの再資源化処理。
これは欧州のリサイクルコストが62ドル/kWh、中国のリサイクルコストが32ドル/kWhという以下の野村総合研究所(NRI)の試算データの値を元にしています。
参考:Argus Media group, EU battery recycling could be profitable by 2025 | Argus Media
1ドル160円程度として62ドルだとすると約1万円です。
パワコン費は15万円くらい、バッテリー制御機器は5万円くらい(ポータブル電源よりはちょっと高いくらい)、設置費15万円くらい(現在の市場価格より)とすると、7kWhなので7で割ると、(15+5+15)/7=5万円となります。
実際に2030年くらいまでにこの波が来るかという話ですが、現在はトヨタと日産が先行している状況です。
現在は中古バッテリー自体が希少なので価格は全く安くありませんが、2020年頃に売れ始めたテスラや軽EV(サクラ等)が2030年頃にちょうど寿命を迎え市場の中古バッテリーの需給が変わり、供給過剰で中古バッテリーの価格が下がると予想されます。
つまり現在は「希少だから高くても買ってもらえる」状態なのですが、「希少じゃなくなるから安く手放すしか無い」状態に移行すると考えられています。
まあ完全にタダ同然で引き渡す状態になるかどうかは予想が難しいですが。
一応中古バッテリーの年代ごとの発生量というのは推定できて、2020年代前半と2030年での推定値は以下となります。
- 2020年代前半:新車販売の0.1%以下がEVだったときのバッテリーが市場に流れている
- 2030年:新車販売の22%がEVだったときのバッテリーが市場に流れている
この根拠としては世界の2010年の新車販売のEV割合が0.1%以下、2024年の新車販売のEV割合が22%という情報からだいたいEVバッテリーの寿命が10年として算出しました。
参考:Our World in Data, Tracking global data on electric vehicles
つまり20倍以上の使用済みEVバッテリーが2030年代くらいになると市場にあふれることになります。
2030年代前半が一つのマイルストーンになると予想されます。
もちろん現在のポータブル電源の1kWhあたりの価格が約6万円なので、もう少し価格を下げないと競争力は無いようにも思います。なので実際は1kWhあたり5万円以下くらいまで下がるかもしれませんね。
まあ物価高もあるので、その頃の物価がどのくらい上がるのかにも影響されますが、中古バッテリーが安くなる可能性もあるということです。
ナトリウムイオン電池の台頭
ナトリウムはリチウムと性質が似ていてバッテリーに使えるのですが、重い、リチウムほど電気を貯められないという性質から今はあまり流通していません。
しかしリチウムよりナトリウムは要するに塩なので世界中にたくさんあり、入手も容易で安く手に入ります。大容量化も要するにたくさんナトリウムを使えばいいだけです。
実際のところナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池より20%程度安く作れると試算されています。
家庭用の定置型蓄電池はEVのように軽い必要がないので、ナトリウムイオン電池が狙っている市場です。
LFP電池とナトリウムイオン電池が同等のコストになるのは2035年頃になると予想されています。(参考:Wood Mackenzie, Sodium-ion batteries enter energy storage market)
まああと10年待つのがどうかという問題はありますが、ここまでの話を総合すると2030年に入るくらいに中古EVのリユース事業が本格化してきて中古バッテリーが安く手に入って、それが寿命を迎えるあたりに安価なナトリウムイオン電池が登場する可能性があります。
この2つをうまく利用できれば現在の投資回収に15年というのが若干改善して、例えば10年くらいでできる可能性がありますね。
まあ中古バッテリーにも15年くらい頑張ってもらわないと元をとってから利益を積み重ねるフェーズに入らないので、どのくらいまで価格が下がるか、何年くらいもつのかというのが未知数なので、完全にメリットだらけの予想にできないのが辛いところではありますが。
結局の所5年で投資を全部回収できるみたいにはならないと思います。
ただ蓄電池の価格が下がるシナリオとしては上で挙げたような感じになりますよ、という話です。
追記:ナトリウムイオン電池の本当の活用シナリオ
上でリン酸鉄リチウムイオン電池LFPより20%くらい安くなるという話をしましたが、それだと現状の50%くらいになるリユース蓄電池とあまり勝負になりません。
ただナトリウムイオン電池の本当の活用シナリオは実は「建材一体型蓄電池」という商品です。
これが何かというと、CNF(セルロースナノファイバー。木が原料)とナトリウムイオン電池を組み合わせた次世代電池です。
この2つの組み合わせは以下のメリットを持ちます。
- ショートしてもCNFが従来のプラスチック製のセパレーターなどの部品より燃えにくく火災リスクが減る
- 低温に強い。LFPは0℃くらいまでが普通に使える限界だが、この組み合わせはマイナス20℃でも問題なく使える
- 形状の自由さがある。曲げたり薄く作ることが可能
この性質があると以下のメリットが生まれます。
- 建材の隙間にユニットとして充填する電池が可能で、床下や壁の中にはたくさんスペースがある
- 住宅用電池は重くても大きくてもいいから「安くて安全で長寿命」なものが求められる
- 建材一体型は建材の構造物の一つとして機能するので重くても建造物が支えてくれるし、高温・低温に強い。つまり重さと大きさの問題を解決しつつ安全
- ナトリウムイオン電池は安いし、長寿命(LFPの1.5倍から2倍)
- 建材一体型にすることで、現状の室内に洗濯機を置くような蓄電池スペースが無くなり、特にハイエンド住宅で室内景観が大きく改善する
- 原料がCNF(木材)、ナトリウム(海水)という極めてサステナブルなものになり環境負荷が低減され、リチウムのような地政学的リスクも大きく後退する
このような特性から、ナトリウムイオン電池の狙う市場は住宅用の安くて安全で長寿命電池というシナリオになります。
あとは大きくてもいいから低温でも使えるという特性上、系統用蓄電池でも広がるかもしれません。
太陽光発電を屋根に乗せてポータブル電源に充電する人増えてます
家庭用蓄電池は確かに家の電気まるごと使えて、ポータブル電源のようにコンセントの抜き差しもいらないので便利なのですが、コンセントの抜き差しの手間を許容できるなら、3kWhくらいの大容量ポータブル電源を購入してそれを屋根の太陽光が発電している時間帯だけ家のコンセントで充電するみたいな運用にすれば、安価に電気を余すことなく使えて便利です。
現在の3kWhクラスの大容量ポータブル電源とそれ以下の容量のラインナップをお伝えして終えようと思います。
上記2つの機種はAmazonのセールで16万円から18万円くらいで販売されています。セールは頻繁に行われているので、それを狙って購入すれば、簡単に自宅に大容量蓄電池を導入できます。
以下はもうちょっと小さい容量からポータブル電源を活用してみたいというとき向けの情報です。
最終更新:2026/02/10
DELTA3はEcoFlowの定番機種です。
1500Wの定格出力を誇り、コンベクションオーブンがフルパワーのコンベクションモードで動きます。

当然テレビにも使えますし、アウトドア時に電気毛布やテレワークのPCへの電源供給でも約1kWh(1000Wh)の大容量なので問題なく使えます。
RIVER 2 Maxは512WhとDELTA3の半分程度の容量ですが、例えばテレワークのノートパソコンへの電源供給くらいなら消費電力30W程度なので、10時間使っても300Wh程度の消費量なので十分もちます。
DELTA3は容量が大きい分価格も高いですが、こちらならDELTA3の半分とはいかないまでも60%程度まで価格が下がるのでとりあえずポータブル電源を使ってみたいならいいんじゃないでしょうか。
ソーラー充電も220Wまで対応しているので、ソーラーパネルも大きめのものが使えて、充電速度も速いです。
Jackeryの1000NewはJackeryの定番機種です。
約1kWhの大容量でDELTA3と同等の性能です。
最近のトレンドであるリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを搭載し、4,000回の充電サイクル後もバッテリー残量は70%を維持します。
毎日使っても10年はもつ計算です。2日に一度なら20年ですね。まあ20年使おうとしてもその前に搭載されている半導体が寿命を迎えて交換でしょうけど。
2000 Newは約2kWhの大容量で、「防災目的で長時間の停電があってもある程度安心」の容量となります。
2kWh(2000Wh)程度あるので、テレビなら40型で80W程度なので25時間つけっぱなしでも持つくらいの容量となります。
災害時はテレビが結構生命線だったりするので、テレビと他のちょっとした家電やスマホを使い続けても初動対応の時間くらいの期間必要な電化製品を使い続けられるのが最大のメリットです。
冷蔵庫も400Lクラスで年間消費電力量が300kWh程度なので、これを一日平均にすると0.82kWh程度になり、まあ安全マージンを取って1日半くらいは停電しても耐えられるくらいになるでしょう。
240 Newは最初のポータブル電源におすすめのモデルです。容量は256Whと低容量ですが、スマホの充電くらいならスマホのバッテリーが約15Wh程度なので、17回程度充電できます。安全マージンをとっても14回くらいは充電できますね。
もしものときのスマホと考えればこの容量は結構安心できる容量ではないでしょうか。
まとめ:蓄電池の今後
今回は蓄電池の価格推移に関する業界レポートみたいな内容でした。
中古バッテリーとかナトリウムイオン電池が今の所本命のシナリオと思われます。
