今回はみかんの皮を肥料にするという内容で、よく言われている「乾燥化」と「茹でる」という下処理の効果を実験で確かめてみたという内容です。
なお桃やリンゴ、バナナなど果物の皮全般の肥料化に関する内容は以下をご覧ください。

みかんの皮は肥料になるのか

みかんの皮は肥料になります。実際にコンポストにする研究も実施されています。
みかんの皮のコンポスト化に関する文献では以下のようにみかんの皮を利用したコンポストの栄養分が明らかにされています。
同様に,コンポストII, IIIでは全窒素;2.85%, 2.22%,全リン酸;1.17%, 0.76%,全カリウム;0.87%, 0.87%となり,炭素率はそれぞれ11.5, 16.1を示した.
(1) 稲葉 伸也, 丸山 和之, 三宅 正起, 藤尾 雄策, 発酵分解装置を用いた温州みかん搾汁粕のコンポスト化, 日本食品科学工学会誌/43 巻 (1996) 11 号 p. 1205-1211.
みかんの皮は各種生ごみと同様に、そのままだとC/N比(炭素率)が高いので、そのまま土に施すと炭素をエサに土の中の微生物が増殖しすぎてしまい、窒素を大量に消費して土の中の窒素まで消費してしまう「窒素飢餓」を起こしてしまいます。窒素飢餓が起きるとせっかくのみかんの皮の窒素が微生物に食べつくされてなくなり、肥効が悪くなります。
そのためみかんの皮を肥料として使うときは堆肥化、つまりコンポストにしましょう。発酵過程を経ることでC/N比が小さくなり、窒素飢餓を防止でき、みかんの皮の栄養分をより適切に家庭菜園に利用できます。
みかんの皮をコンポストにするのは結構難しい

みかんの皮は以下の理由でコンポスト化が難しいと言われています。
- 水分量が多くて発酵がうまくいかない
- 酸性度が強く、微生物の発酵を妨げてコンポストにしにくい
- 皮に油分が多くコンポスト化しにくい
みかんの皮の水分量は生ごみですし、皮を絞るとプシュッと汁が出てくることからもわかるように結構多いです。
ミカン果汁粕(外皮、内皮、パルプ、種子など)の水分量や肥料成分のデータは以下のようになっています。外皮だけのデータではないですが、おおよその目安にはなるでしょう。
| 種類 | 水分 | 炭素 | 窒素 | 炭素率 | リン酸 | カリ |
| ミカン果汁粕 | 85 | 6.8 | 0.15 | 45 | 0.03 | 0.17 |
また柑橘系の作物なので酸性度が高いです。
コンポスト化には最適な pH 範囲があり、pH4~9 程度であれば微生物が活発に活動し、良好な好気発酵が継続します。
(中略)
しかし、例えば柑橘系の果汁は pH が低く(レモン果汁はpH2 程度)、柑橘系の廃棄物が多量に混入するとコンポストは pH4 を下回ることがあります。
KITA 北九州国際技術協力協会, 第 5 章 コンポスト化技術の基本理論ʷ注意すべき項目
そしてみかんの皮には油分が多く、それが発酵を妨げる可能性があります。
油分の正体はクチクラ層というクチン(不飽和脂肪酸)とワックスからなる層、あるいは皮の油胞に含まれるリモネンなどの精油成分と考えられます。
クチクラ層は植物体からの蒸散や病原菌などの外敵を防ぐ効果があり、微生物の増殖を頼りにおこなう発酵とは相性が悪いのです。みかんの皮のテカリはクチクラ層なんでしょうね。
またリモネンなどはミミズコンポストではミミズに害がある物質らしく、何らかの生分解性阻害要因と考えられ、これも大量に投入するとよくないようです。実際リモネンは広範な病原菌種に対して生育阻害効果があるという研究もあり、病原菌種に有効なら、発酵を促進する微生物に対しても生育阻害効果があると考えられます。
ガス化したリモネンが病原糸状菌の病原性に必須な発芽や侵入器官の形成を阻害し、その作用が広範な病原菌種に有効であることが明らかとなった。
藤岡 佳代子, リモネンによる病原糸状菌の病原性制御と宿主植物における誘導抵抗性に関する研究, 岡山大学大学院 自然科学研究科 博士論文, 2016-03.
みかんの皮はコンポスト化で油分が多いから分解が遅くなるというのは、油分に多く含まれるリモネンの抗菌作用も原因として考えられます。
みかんの皮をコンポストにするときにやるべきと言われていること

上で挙げた三つの難題に対するよく言われる対処方法は以下の3つです。
- 乾燥させる(水分量の減少)
- 茹でる(油分であるクチクラ層や精油成分を温水に溶かして除去)
- 石灰などのアルカリ資材の投入(酸性を中和)
コンポストはみかんの皮以外の生ごみも投入するので、石灰の投入は今回は除外します。みかんの皮だけだとpHが下がりすぎるでしょうけど、他の生ごみで薄まるだろうという考えからです。
そうすると乾燥と茹でるという対応が現実的ですが、この効果がどの程度あるのか、というのはあまり研究されていないようです。正直なところ乾燥や茹でるという対応無しにも皮を細かくして土に混ぜてコンポスト化すれば分解されるという情報も結構あり、乾燥と茹でるという効果に関してははっきりしません。
実際「茹でる」という対策に関しては、リモネンは常温で液体であり、沸点176度程度で、水に不溶なので茹でる意味があるのか微妙です。茹でることで油胞が壊れたりすれば外に飛び出しそうですが、茹でることで柔らかくなって組織が壊れやすくなる、といった現象が起きるのかはよくわかりません。しかし実際にユズ風呂などは効能があり、お湯にリモネンが溶けだすというのはあり得る現象のようです。
そこで今回は「乾燥」と「茹でる」の効果を調べるために実際に以下の4パターンで実験をしてみました。
- ①乾燥あり・茹でる
- ②乾燥無し・茹でる
- ③乾燥あり・茹でない
- ④乾燥無し・茹でない(つまりそのまま)
単純に考えるとコンポスト化のしやすさは「①>②・③>④」となりそうですが、はたしてそうなるでしょうか?
実験概要
まずみかんを一つ食べてその皮を入手します。測ったら25gでした。

この皮を4つに分けます。一つあたりの重さは5gから6g程度にしてあります。このセットを4つ作成します。

4つのセットのうち2つを煮ます。今回は石油ストーブの上で煮ました。

煮た温度は80度程度でした。20分程度煮ました。

その後段ボールに畑の土を入れます(1セット600ml程度)。畑の土は5年程度使っているレイズドベッドの土です。主な構成は野菜用培養土とコンポストの混合物です。

そこに細かくした①から④までのみかんの皮を投入します。

4パターンで皮を投入して土とよく混ぜます。
なお乾燥用として、煮たセット一つと煮ていないセット一つを乾燥させました。

乾燥は適宜ソーラーフードドライヤーも活用しました。

カリカリになるくらい乾燥させた後、段ボール内の土と混ぜました。
皮を投入してからは一日一回混ぜて土が乾いてきたら少し湿るくらいに水を足しました。
実験結果
約2週間適宜水分を霧吹きで調整しながら、ほぼ毎日土の中を掘り返してみかんの皮がどうなったか確認しました。実験日数は約2週間です。
| 経過時間 | ①乾燥あり・茹でる | ②乾燥無し・茹でる | ③乾燥あり・茹でない | ④乾燥無し・茹でない |
| 一週間後 | 皮全体が黒ずむ | 皮全体が黒ずむ | 皮全体が黒ずむ | 皮全体が黒ずむ |
| 10日後 | 小さい皮は土と同化 | 小さい皮は土と同化 | 小さい皮は土と同化 | 小さい皮は土と同化 |
| 二週間後 | 大きい皮は変化なし | 大きい皮は変化なし | 大きい皮は変化なし | 大きい皮も土と同化 |
皮全体が黒ずむというのは大きい皮も小さい皮も黒ずんできたということです。
小さい皮は1cm×1cmよりも小さいくらいの皮のことです。大きい皮は1cm×1cmよりも大きいくらいの皮です。
二週間後の分解されずに残った皮はこんな感じです。スコップ中央に黒ずんだ皮があります。

二週間後の ④乾燥無し・茹でないの段ボールはこんな感じです。皮は見えず、土だけが見えています。

結果から言えること
予想を裏切る結果となりました。
なんと一番分解されたのは「 ④乾燥無し・茹でない」でした。他の段ボールはほぼ横並びで大きい皮が分解されずに残った結果となりました。
つまり以下のようなことが言えそうです。
- 乾燥と茹でることによる分解スピードの向上は観測できなかった
- 小さい破片にしてコンポストに入れると早く分解される
乾燥と茹でることの効果
実験結果から茹でることと乾燥させることが分解を促進するという効果は確かめられませんでした。
しかしながら若干分解に有利に働くこともないとは言い切れませんでした。
それは乾燥です。乾燥するとみかんの皮はパリパリになります。
すると細かくする際に粉々になりやすく、小さな破片を作りやすくなります。
今回の実験結果では細かい破片は実験開始から10日程度で土と見分けがつかないくらいになったので、細かくすると見かけ上、土に還ったように見えるようになりやすいという効果を得ることができます。
乾燥して皮を粉々にすればこの効果を得やすくなるのでそこが乾燥の利点です。
茹でる効果は残念ながら今回の実験では堆肥化におけるメリットが発見できませんでした。しかしながら茹でるという手法に全くメリットがないわけではありません。茹でることで皮を洗うような状況になるので海外産のみかんなどに農薬が付いていた場合それを多少なりとも減少させる効果はあるでしょう。
結果から考えられること
10日後くらいから小さい皮が土と同化していました。これは黒ずんだ小さい皮が土の粒形と同じくらいだったので黒くなったことで土と見分けがつかなくなったとも考えられます。
実際に発酵して分解されたのかというのははっきりしません。ただし黒っぽくなってはいるので腐熟は進んでいるようです。
また大きい皮は腐熟が進んで黒っぽくなっても、分解されずそのまま残っていました。やはりみかんの皮は分解されにくいというのは確かのようです。
乾燥させる効果が見られなかったのは、土がそもそも乾いていて、そこに水分が少ない皮を投入するとかえって水分不足になって分解スピードが下がったとも考えられます。みかんの皮の水分量だけで見ると80%程度と結構多いですが、それでコンポスト化の障害になるのは皮だけを大量に積み上げるような場合であり、乾燥した土に少量投入する場合はあまり影響がないようです。
茹でることでリモネンなどが減少するというのはある程度あると考えられますが、分解を促進するような大きな効果が確実にあるというわけではないと考えられます。
むしろ茹でたり乾燥させることで分解スピードを遅くさせる可能性もあるようです。「 ④乾燥無し・茹でない」が大きな皮も分解されたというのはその可能性を示しています。ただし素人が適当に土に霧吹きをかけながら毎日かき混ぜただけの実験なので、厳密性・客観性は保証されていないことに注意は必要です。
結局一番大事なのはみかんの皮をコンポストに投入するときの粒形のようです。細かくすれば早い段階で土と同化する、大きければいつまでも残る、というのが得られた教訓でした。
まとめ【みかんの皮を肥料にするときは細かく砕くといい】

今回はみかんの皮を肥料にするというテーマで茹でることと乾燥させることの効果を実験で検証してみました。
結果は何もしないほうがかえってうまくいくという結果になりました。一番大事なのはコンポストに投入する際に皮の粒形を小さくすることでした。だいたい5mm×5mmくらいより小さく砕けば早く土と同化します。
みかんの皮は肥料にしにくいと言われていますが、家庭でコンポストにする際はとりあえず小さく砕けば肥料になる可能性が高いです。みかんの皮は投入しないようにと指導されることもありますが、細かく砕いて投入してみるとなんとかなりそうですね。
